放課後のの調理実習室に、一人の影があった。容姿は平凡で、背もそれほど高くは無いが、隙の無い物腰はどことなく猫科の動物を彷彿させる。 フェミニン生徒会『隠密』の矩継 琴葉である。 琴葉は、計量器具で分量を量り、ボウルの中に流し込んだ。そして、木製のへらを手にすると、温度に気を使いながら丁寧に練り込む。ふと、腕に嵌めた時計を見る……先程試作した物が凝固する頃合だ。 冷蔵庫を開けて、 出来上がったものを慎重に味見する。 「やはりだめか……」 こんなものを提出したら、何と言われるだろう? 焦りとは裏腹に、期限だけが迫っていた。 必ず提出しなければならないというプレッシャーもあったが、 それよりも、上手に作りたいという気持ちが先行してしまい、結局失敗する。 いかに優秀な隠密と言えど、人並みに苦手な事だってある。 幼い頃から神宮寺のお庭番として厳しい修行に明け暮れてきた琴葉には、 料理など全くの専門外だ。……こんな時、あの人なら…… 琴葉は溜息を吐くと、目の前の材料をじっと見つめた。 ――コツコツ ノックの音に顔を上げると、調理実習室の入口に日本人離れしたプロポーションを持つ一人の女生徒が、すらりと立っていた。 「あなたに苦手な科目があったなんて、驚きですわね。」 その女生徒は、まるで貴族階級のお屋敷に住む猫の様に、全く音を立てず、気品に満ちた足取りで教室内へと歩を進める。 逆光に照らされた亜麻色の髪がゆらゆらと揺れる。フェミニン生徒会『隠密』のリーダー、銀河 久遠である。 「……久遠さん……どうして、私が此処に居るとお分かりになったのですか?」 「あら、簡単な事ですわ。あなたの成績表を見ましたもの。」 さらりと言う。琴葉は指でこめかみを押さえる、やはり隠密にはプライバシーなど無いらしい。 「隠密でも特に優秀なあなたが、ずいぶんと手こずっているようですのね?よろしければ、私が教えて差し上げますわよ?」 猫と言うより狐に近い微笑だ。普段より優しげな久遠に、若干警戒しつつも、琴葉は教えを請う事にした。 「よ、よろしくお願いします。」 「よろしいですの?……それでは……こうして、水が入らないように細心の注意を払って……温度は45℃きっかりに……」 久遠は自分で料理のお手本を示しながらも、テキパキと琴葉に指示を送る。琴葉はわずかに久遠に遅れながらも、せわしなく手を動かす。――忙しい……。 忙しいが……楽しい。ただ独りではなく二人で料理を作っているだけなのに……。 しかし、考えてみれば隠密の職務は、他人にぴったりと張り付き、素行を調べ上げながら、それ以上他人に深入りする事の無い孤独な仕事ばかりだった。だから、隠密は隠密同士親睦を深めるのも、たまには良いかもしれない。 久遠さんも、そう考えて私との時間を共有してくれているのだろう。なにげない気配りが琴葉には嬉しかった。……ひょっとしたら、上司と部下の間柄以上になれるのかもしれない。 自然とボウルを持つ手に力が篭る。 出来上がったものを二人で味見する。自分で作った物とは比較にならないほど美味しい。デパート等で売っている商用のものを凌ぐレベルだ。 「いかがかしら?琴葉。」 久遠は片目を瞑り、にっこりと微笑んで見せる。上司の、普段は見せない表情を見せつけられ、琴葉はどきどきと大きく鼓動を感じた。 精一杯の気持ちを込めてお礼を述べる。 「あ、ありがとうございます、久遠さん。」 「構いませんのよ?……私は琴葉のエプロン姿を見られただけで満足ですわ。」 琴葉は頬を紅潮させて俯いた。
銀河 久遠は 無駄の無い動作で衣服を脱ぐと、着物を箪笥に仕舞うかの様に綺麗に折り畳んで、脱衣場の篭に収めた。今日は、鼻歌でも歌いたくなるほど機嫌がいい。 ステップを踏むような軽い足取りで浴室へ向かう。入口の扉がからからと鳴る。 女子寮の生徒達はこの時間帯には誰も居ない筈だ。入浴時間の統計はとってあるが、念のため辺りを見回して確認する。…… やはり、誰も居ないようだ。 久遠は自分の情報の正確さに満足すると、だだっ広い浴場へと歩みを進める。 こうして、誰も居ない時間を選んだのには理由があった。 久遠は浴室の中央で立ち止まると、無人の室内に言葉を発する。 「琴葉さん、いらっしゃるのでしょう?」 ……返事は無い。 「何も恥ずかしがる事はありませんわ、出ていらっしゃいな?」 すると、天井の一角が音も無く開き、ショートカットの少女が久遠の背後にシュタッと降り立った。 「気配は完全に消していたのに、どうしてお分かりになったのでしょうか?」 「あら、簡単な事ですわ。あなたはアニメ版極上生徒会で、私が入浴する時にはいつも現れますもの」 「そ、そこまでDVDでチェックしていたとは……流石は隠密のトップ、恐れ入ります……。でも、私はいつも久遠さんの入浴を覗いている訳ではありませんよ?……それに……あ、あくまでこれは、一生徒の素行調査として……これは隠密として必要な職務であり……」 しどろもどろに言い訳する琴葉。 「ふふ……琴葉の立場は私が一番良く知っていますわ。でも、今日は監視するために来た訳ではないのでしょう?」 「はい、実は先程のお礼に、お背中をお流ししようかと……」 なるほど、琴葉の手にはお風呂セット一式が抱えられている…………でもアレは?……久遠の視線に気付き、慌てて琴葉は愛用のシャンプーハットを背中に隠す。 久遠はくすりと笑って、琴葉の手を取った。 「嬉しいわ琴葉。是非お願いいたしますわ?」 ----- ----- 琴葉は緊張した面持ちで、いそいそと脱衣場で服を脱ぎ、タオルを裸体に巻き付けた。 女同士とはいえ久遠の流麗な肢体を前に、自分の貧相な体を晒すのは恥ずかしかったからだ。 しかし、 これから久遠の体に指が触れるかと思うとつい、顔が火照ってしまう。い、いけない、いけない、女同士で何を考えて……い、いや、女同士だから大丈夫。女同士だから大丈夫。女同士だから大丈夫。 ガラガラガラ〜。 「じゅ、準備が出来ました、久遠さん。……それでは、失礼致します……」 琴葉は遠慮がちに久遠の後ろに座ると、しっかりとスポンジを泡立てる。何も纏っていない久遠の体は、間近で見ると眩むほど美しい(琴葉主観)。普段何を食べたらこんな体になるのか……肩から背中のラインは完璧なフォルムを描き、腰は見事にくびれている。水を弾いて輝くような肌にぴたりと触れてみると、手の平を固定するのが困難なほどつるりと滑る。こうして背に満遍なく触れると 、普段は衣服で隠れた起伏がよく判る。琴葉は、感嘆の溜息を漏らしながらスポンジで背を流していった。 と、あらかた洗い終えた所で、 久遠が琴葉にくるりと向き直る。 久遠の裸体を正面から視てしまった琴葉は、慌てて紅潮した顔を伏せた。 「どう致しましたの?今度はわたくしが琴葉さんを洗ってさしあげる番ですのよ?」 ----- ----- 久遠は、恥ずかしがる琴葉に回れ右をさせる。先程とは逆に、久遠が後ろをとる体勢となった。 琴葉は人に背中を向ける事に慣れないせいか、落ち着きが無い。膝を合わせて背を丸くし、しきりにもじもじしている。久遠は琴葉の体に巻き付いたタオルをゆっくり下ろしていく。唯一身に纏っていた布を剥かれ、外気に晒された琴葉の肌がぶるるっと震えた。 琴葉は一糸纏わぬ姿を恥らっている様だが、その全身は久遠の瞳には美術品の様に映った。二次性徴の膨らみは小さかったが、引き締まった筋肉が女性的な隆起を強調している。勿論、垂れ下がった部分など一箇所も見当たらず、肉つきは絶妙な均整を保っていた。 久遠は、繊細な工芸品を賛美する様に スポンジを隅々まで巡らせる。そうして起伏に沿って指を這わせるうち、この身体についてもっと知りたい、という欲望すら芽生えてくる。桶に湯を汲み、琴葉の背に流す。久遠は石鹸の泡を全て洗い流すと、脇腹に指を這わせてみた。 「ひゃっ……」 琴葉はくすぐったそうに身を捩った。かなり感度は高いようだ。 ----- ----- 体を洗い終えた二人は、寄り添うように湯船に腰を沈める。 プールの様にだだっ広い湯船を占有し、一時の優雅な思考に浸る。 しかし、肌は密着しているのに、互いに意識しすぎているせいか、二人は無言のまま互いの顔を見ようとしない。もどかしさに琴葉が溜息を吐くと、湯船から立ち上る湯気がゆらりと揺れ、胸中に収めていた期待と不安とが入り混じるように、茫洋と渦を巻いた。暫し、夢の中に居る様に琴葉は暫く陶然と渦を見つめていたが、意を決したように久遠に声を掛けた。 「く、久遠さん……私の事……私に足りないものは何なんでしょう?」 本当はもっと別の事を訊きたかったのだが、上手く言えず途中で言い淀んでしまい、無理矢理方向を変えてしまった。今の琴葉にはこれが精一杯だった。 琴葉らしい生真面目な問いに、久遠は溜息を吐いた。 久遠から見て琴葉は非の打ちどころの無いほど優秀だが、“楽しむ”という事にあまりに疎い。それは、神宮寺の古い因習のせいでもある。だからこそ、私が教えてあげなければならない。それは久遠が敬愛して止まぬ、神宮寺奏の意向でもあるはずだ。 久遠はすいすいと琴葉に体を寄せ、僅かに身じろぎするその体を両手で包むように抱きしめる。腕に豊かな乳房が押し潰される感触が伝わり、琴葉は「ふっ」と小さな声を上げた。久遠は鼻が擦れ合うほど顔を寄せると、猫がじゃれるように甘い声で囁いた。 「……私は琴葉の事を良く知らないのですけど……あなたに足りないのは、コレだと思いますわ。」 そのまま、緩やかにゆらぐ湯の流れに乗るように、琴葉の唇に自らの軟らかい唇を重ねる。いきなり舌は入れず、琴葉の緊張をほぐす様に、唇の先でソフトな刺激を与える。琴葉は一瞬眉を顰めたが、軟らかく加えられていく刺激に陶酔するように、目を閉じて受け入れた。 湯気の熱気に当てられたように肌は紅潮し、四肢は弛緩していく。久遠の唇は、暫く感触を楽しんだ後、名残惜しそうにわずかに糸を引いて離れた。 「私は琴葉の事、もっと知りたい。琴葉の全てが知りたいの。」 琴葉の背がぷるぷると震え、両腕が久遠に抱きついた。熱の篭った瞳で久遠を上目使いに見つめ、微かに唇を動かす。上手く伝えられないようだが、肯定の意味だ。 琴葉の表情は相変わらず固く、ぎこちないが、琴葉と知り合って以来初めて見せる表情が、そこにはあった。両の瞳に涙を溜め込んで、今にも泣き出しそうにも見える。その表情からは、 普段から無表情な琴葉の感情を読み取ろうと努めてきた久遠には、十分過ぎるほど込められた想いが伝わってきた。 久遠は浴槽の縁の一段高くなった部分に琴葉を座らせると、唇から首筋へと自らの唇を滑らせた。首筋から鎖骨へと優しく啄ばむように滑っていくと、頬が軟らかい胸の白桃に突き当たる。久遠は、弾力を楽しむように二度三度頬を擦り付けると、肌に痕を残さぬようにその膨らみを吸った。琴葉が「ひゃっ」っと腰を捻り、久遠の唇から逃れようと身悶える。 「琴葉、そんなに動いては駄目ですのよ。もっとゆっくり味わわせて……」 久遠は、浴槽の縁と自分の体で、琴葉を挟み込むと、浮力を活かして琴葉の両足に乗る。さらに左右に逃げる両足を腕で押さえ込むように固定する。そうすると、ちょうど久遠の口が、琴葉の胸の桜色の先端と同じ高さになった。久遠は、目の前で呼吸に合わせて上下に動く蕾を見つめると、おもむろに口に咥えた。堪らず琴葉の背が反る。 ![]() 「ふあっ!……気持ち…………ぃ!!!」 久遠はびくびくと波打つ腹筋を楽しみながら、小さな先端に刺激を加えていく。 桜色の粘膜に沿って、円を描くようにねぶりまわすと、足を押さえつけた両腕から歓喜の痙攣が伝わってくる。歯で甘く噛むと痛がるようなので、 唇の上下で挟み、首を左右に振り、 口紅を塗るように軟らかい唇の上を滑らせる。 さらに、小刻みに舌を動かし、軽く吸って引っ張ってみたり、様々な刺激を加えてみた。 例えば、琴葉の視線を感じた時は、わざと大きく、ちろりちろりと舌を動かして見せる。すると、羞恥に耐えられなくなって顔を伏せてしまう。 先程の感極まった表情といい、その初々しい仕草が堪らない。久遠は満足した様に口を離すと、もう片っぽの先端も口に含み、柔突起の感触を味わった。 「ふっ――――!!!」 琴葉は咄嗟に片手で口を押さえ歯を食いしばる。しかし、どうしても嗚咽が漏れるのを防ぐ事はできない。久遠の舌先が早くなってくると、それに合わせて琴葉の背も大きく反っていく。琴葉は限界まで背を反らすとびくんびくんと痙攣した。どうやら密かに達してしまったらしい。 「はぁ……はぁ……はぁ……」 荒くなった呼吸を整える琴葉。久遠がその両足の間に揺れる水面に目をやると、お湯とは異質なゆらめきが見えた。久遠は人差し指で軽く掻き混ぜると、ねっとりと糸を引くそれを、琴葉の下腹部に“の”の字を描くように塗りつけてみせる。琴葉は羞恥で顔を真っ赤に染めながら、久遠を責める様に見つめ返した。その表情に欲情したのか、久遠は嬉しそうにおしりをくねくねと振りながら、もう一度、部下への淫猥な行為に没頭する。 風呂場の水面にゆらゆらと一際大きな波紋が広がった。
気がつくと琴葉は湯上りのガウンを羽織り、いつの間に此処に来たのか、見知らぬベッドに座らされていた。 豪華なベッドが備え付けられた部屋。その部屋は隠密の一部のメンバー以外は、存在すら知らない。 そこは、隠密の職務を遂行するために必要な部屋だ。 外部の情報収集の為、内務監査の為、対象の女生徒に『質問』する為に用意された場所だ。固く閉じた口を湿らせる為に必要な器具も揃えてある。 久遠はガウンを羽織ったまま、そのうちの一つである薬瓶を手に取ると、 成人女性の適量の半分程度をグラスに移し、さらにそれを等量ずつ分ける。 そこら辺の店で買えるような甘い薬では無い。ナフレスという組織から入手した薬だ。 今年度、ナフレスは神宮寺の傘下に入った。 海外に巨大な資本を持つナフレスを、神宮寺が買収する事が出来たのは、久遠の虚実を織り交ぜた地道な情報操作と、奏会長の持つ能力のおかげだった。 その一件で久遠は、資金力で神宮寺を上回っていたナフレスが、何故神宮寺をあれほど恐れていたのか思い知らされた。 そして、神宮寺奏の持つ秘密、その一部始終を知ることが出来たが、彼女は全てを胸の内に収める事に決めた。 ナフレスの諜報機関は、神宮寺の諜報機関となったのだから、今度は秘密を守らなくてはならない立場になったのだ。 「私の所属していた諜報機関では、女の子に口を割らせる手段として、まだ幼いうちからこういう事を仕込まれたわ。……あなたの神宮寺ではどうなのかしら?」 一杯目を口に含み、ベッドで呆けている琴葉を抱き寄せ、 口移しに液体を流し込む。そして、もう一杯のグラスを一気にあおると、体の起伏にに引っ掛けていたガウンを脱いだ。 着ていたものを脱ぎ捨てると、琴葉の隣に座り、ゆっくりと琴葉の着衣を脱がしていく。そのうちに薬の効果が表れ始めたのか、琴葉の肌に朱が燈った。 「久遠さん?……あ……あれ?……あっ!」 琴葉は未知の感覚に戸惑っているようだ。試しに琴葉の裸体にシーツを被せてみる。洗い立てのシーツは、日光の心地よさを十分に蓄えており、肌に擦れる感触は気が狂いそうになるほど気持ちがいい。 まして、媚薬を飲まされ全身が性感に狂った状態では、ちょっとした身じろぎですら気が飛びそうになる。琴葉は全身を硬直させたまま、身動きせずに快楽をやりすごそうとするが…… 「量は少ないから、大丈夫ですのよ?」 そんな様子を見て、久遠は消費者金融業者のように優しげな口調で囁くと、シーツの端をちょいちょいと引っ張る。 「ふわっ!……あふぅ!……」 久遠は、シーツに折り目を付けながら堪らず悶える琴葉の肉体美を堪能しつつ、摩擦による刺激を加えていく。 可愛らしい声をあらかた楽しんだ後、遊戯の内容は布を挟んだ愛撫に移行する。琴葉の無駄の無い滑らかな筋肉に沿って指が這う。 太ももや肩、手足の末端まで、全身の感度を探るように指が這っていくと、指の動きに伴って琴葉の肢体が感応する。 それは遠目に見れば、猫が捕らえた獲物をころころと転がして遊んでいるようにも見えた。 「うふふ……あなた、海から揚がったばかりの魚みたいにぴちぴちしますのね……」 久遠は、転がる体を背後から抱き抱えるように固定する。抱き留めた小さな背から、琴葉の震えと共に快楽が這い昇ってくる。久遠にも媚薬の効果が十分に効いている証拠だ。 まずは、指先のみを使い胸部のマッサージする。まだ他人に触れられた事のない膨らみは、軟らかいゴム鞠の様な反発力を返してくる。 十分に指の感触を刷り込んだ後、両手の薬指で胸に大きく円を描くように乳房をくすぐっていく。 その指の描く円周が山を登るようにだんだんと狭まっていき、頂上付近で一番小さくなった時、琴葉は達した。 小ぶりな乳房全体を掌で包み、歓喜の痙攣を共有するかのように、のけぞった背を体で受け止めてやる。しばし、膨らみをゆっくり揉みしだきながら、絶頂を迎えた余韻に浸った。 ----- ----- その後、久遠の柔らか指先が白魚の様に体を泳ぐ度、琴葉は幾度となく達した。 いつの間にか汗とそれ以外の体液で、シーツはしっとり濡れてしまっている。久遠が邪魔になったシーツを剥ぎ取ると、裸体をさらけ出され、毛皮を刈られた子羊の様に縮まって、琴葉はくねくねと身を捩った。つるりとした下腹部からレモン蜜を滴らせながら、もじもじと両の太ももを擦り合わせている。久遠も同じく、薬の効果で体が欲しくて堪らない。 二人は発情した猫のように縺れ合った。 二人は絡まり合い、久遠が上、琴葉が下となり、 野生動物がお互いの傷を舐め合うように、形も振りも構わず、6と9の体位で互いの秘裂を慰め合う。 ぴちゃぴちゃという水音とくぐもった声が、二人きりの室内に響いた。 「ん………うん…んん……」 頬に筆の穂先の様な毛が触れるのをくすぐったく感じながら、琴葉は上司へのご奉仕を続ける。しかし。琴葉の体の動きは大きいが、舌はあまり動いておらず、こういった行為自体を生まれて初めて知ったように稚拙で躊躇いがちだ。 と言うより、久遠の巧みな舌技に意識を持っていかれ、それどころでないからかもしれないが……。仕方なく、久遠がアドバイスを送る。 「ン……隠密は……自分の舌に……自信を持たなくては……駄目ですのよ?……もっと、こう――」 久遠の舌が、ぬちゃあっと糸を引く。 琴葉の両足がガクガクと痙攣し、絶頂が近いことを教える。久遠は琴葉の腰を左手で抱え上げるようにして押さえつけ、 右手の人差し指と薬指をぷっくりとした双丘に当て、掌全体を持ち上げるように秘肉を押し広げる。毛が無いので持ち上げやすい。 外気に晒された花の蕾は、痛々しいほど充血しており、先端には雛人形のように衣から頭を出している花芯があった。 久遠は、空いている中指を雛人形の上部にあてがい、薄衣の裾を引くようにゆっくりと脱がしていく。 そして、すっかりむき出しになった花芯に、おもむろに息を吹きかけてみた。 「ひぁあっ!………熱っ!!……」 ピクン、ピクンと小さなおしりが上下する。久遠は腰の動きに合わせ上下する花芯を嬲るように、なおも熱い息を吹きかける。琴葉も、久遠の花弁から滴る蜜を掬うように舌を動かす。相変わらず舌使いは拙かったが、薬のせいか久遠にも十分な刺激となって伝わった。 「ふっ!……琴葉……いいですわ……いいっ……」 「あっ!も、もう駄目です。……私の……。」 互いに激しく動く腰を押さえつけ……舌先で―― 「――――――――ッ!!!」 久遠の顔に水飛沫が飛び、一際大きく琴葉の背が反る。がくん、がくんと大きく痙攣した後、それは次第に収まっていった。 ----- ----- 行為を終えた二人は、お互いに向き合うように、気だるい体をベッドに横たえる。 「……久遠さん……久遠さん……」 うわごとの様に繰り返す言葉を、久遠の唇が遮る。 「そんなに連呼しないで欲しいですわ。銀河久遠なんて名前、偽名でも恥ずかしいですもの。」 そして久遠は、琴葉の耳元に唇を寄せ、そっと本当の名を伝えた……
放課後のの調理実習室に、一人の影があった。 琴葉は、計量器具で分量を量り、ボウルの中に流し込んだ。そして、木製のへらを手にすると、温度に気を使いながら丁寧に練り込む。ふと、腕に嵌めた時計を見る……先程試作した物が凝固する頃合だ。 冷蔵庫を開けて、 出来上がったものを慎重に味見する。 「うん、上出来だ……」 最後の仕上げとして、ホワイトチョコレートでメッセージと、あの人の名前を刻んでいく。 「ええと、St……Val……ent……ine’s……」 ――コツコツ ノックの音に顔を上げると、調理実習室の入口に髪の毛を三つ編みにした一人の女生徒が立っていた。 「ごきげんよう、矩継ッチ。あなたがチョコを作るなんて驚きね。私が貴女の恋を応援してあげる。あら見た事の無い名前ね……ボゲードンのお友達かしら?」 その女生徒は、野良猫のようにずかずかと教室内へと歩を進める。フェミニン生徒会高等部二年生、アンシャーリー、バンクロフトである。アンシャーリーは琴葉の目の前まで歩いてくると、懐から薬瓶を取り出した。 「恋と言えば、やっぱりコレよね。目も眩むばかりの激しい恋みたいなものが芽生えるわ。象だってイチコロよ。いいえ御代は要らないわ。」 「そ、そうなのか?……それは凄そうだが……」 アンシャーリーは紫色の薬を一滴、出来上がったばかりのチョコの上に落とし、去っていった。
移動教室のため、琴葉が廊下を歩いていると、ふいに琴葉の携帯が鳴った。着信表示は“銀河久遠”だ。隠密の任務かも知れない。 ――そういえば、昨日私の送ったものは満足してもらえただろうか?琴葉は高鳴る胸を押さえながら、通話ボタンを押した。 「はい……私ですが……」 「ハァ……ハァ……琴葉タン。あなたの下着は何色なのかしら?……いいえ言わなくても分かりますわ。穿いてないんでしょう?萌ェー!」 「あ、あの……久遠さん?」 「ガッ……琴葉、指令を伝えますわ……今すぐ教会に直行して新婦を待ちなさい。これは命令ですのよ。ああ……子供は二人ぐらい欲しいですわ。以上……ガッ。」 擬音語を最後に、携帯は切れてしまった。掛け直しても応答が無い。なんだか大変な事になってしまったようだ…… ど、どうしよう、どうしよう、とにかく聖奈さんに連絡して、久遠さんの奇行を止めないと。それから、それから…… 琴葉はわたわたと駆け出した。 <終わり> |